お酒の適量について調べると、「1日20g」「週2日は休肝日」といった数字が出てきます。
ただ、この数字が何を指しているのか、どこまで守るべきものなのかは、意外とはっきり書かれていません。20gというのはビール何杯なのか。休肝日の2日には根拠があるのか。
この記事では、厚生労働省のガイドラインをもとに、飲酒量の考え方を整理しました。数字の意味と、その数字がどこまで確かなものなのかを、できるだけ正直に書いています。
「量」ではなく「純アルコール量」で考える
まず前提から。厚生労働省が2024年2月に公表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、飲酒の健康リスクを考えるときは、飲んだお酒の量ではなく純アルコール量で見るべきだとされています。
計算式はこうです。
純アルコール量(g) = 量(ml) × 度数(%) ÷ 100 × 0.8
最後の0.8はアルコールの比重です。
なぜ「杯数」ではだめなのか。同じ1本でも中身がまったく違うからです。
- ロング缶ビール(500ml・5%):500 × 0.05 × 0.8 = 20g
- 缶チューハイ(350ml・9%):350 × 0.09 × 0.8 = 25.2g
小さいほうの缶チューハイのほうが、アルコールは多い。 度数が高いお酒は、量が少なくても純アルコール量では上回ります。
「今日は缶1本だけ」と思っていても、中身によって身体への負担は変わります。ここが杯数で数えることの落とし穴です。
20gという数字の位置づけ
よく見かける「1日20g」は、節度ある適度な飲酒の目安とされてきた数字です。純アルコール20gは、おおよそ次の量にあたります。
- ビール(5%):中びん1本・ロング缶1本(500ml)
- 日本酒(15%):1合(180ml)
- 焼酎(25%):0.6合(約100ml)
- ワイン(12%):グラス2杯弱(約200ml)
- ウイスキー(43%):ダブル1杯(60ml)
ただし、20gは「ここまでなら安全」という線ではありません。
ガイドラインが示しているのは、生活習慣病のリスクを高める飲酒量という別の基準です。こちらは1日あたり男性40g以上、女性20g以上とされています。
つまり女性の場合、20gはすでにリスクが高まる水準ということになります。同じ20gでも、男女で意味が違うのです。
さらに疾患別に見ると、もっと低い量から影響が出るものもあります。高血圧や男性の食道がん、女性の出血性脳卒中は、少量の飲酒でも発症リスクが上がると考えられています。大腸がんは男女とも20g程度からリスクが高まるとされています。
「20g以下なら問題なし」という単純な話ではない、というのが正確なところです。
同じ量でも、人によって影響は違う
ガイドラインは、次のような人はアルコールの影響を受けやすいと指摘しています。
- 女性:男性よりもアルコールの影響を受けやすい
- お酒に弱い人:飲むと顔が赤くなるなど、代謝能力が低い人はリスクが高い
- 高齢者:体内の水分量が減るため、若い頃と同じ量でも酔いやすい
体重によっても分解にかかる時間は変わります。数字はあくまで平均的な目安であって、自分に当てはまるとは限りません。
自分がどのくらいで酔うか、翌日に残るかは、本人がいちばんよく知っているはずです。数字は参考にしつつ、実感のほうを信じたほうがいい場面もあると思います。
休肝日の「週2日」に根拠はあるのか
ここは正直に書きます。「週に2日」という数字に、明確な医学的根拠は確認されていません。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、休肝日は「肝臓を休めるために週に1日以上飲酒しない日を設けることを推奨する目的で作られた造語」と説明されています。2024年のガイドライン本文には、そもそも「休肝日」という言葉自体が使われていません。代わりに「一週間のうち、飲酒をしない日を設ける」という表現になっています。
「週2日」を推奨しているのはアルコール健康医学協会で、臓器の修復のために週2日程度が必要という立場です。一方で、週2日の休肝日による健康効果を示すエビデンスはまだ報告されていないという指摘もあります。
肝臓を専門とする医師も、1日お酒を抜くとどんな効果があるのか、何日抜けば肝機能が回復するのかは明確になっていないと述べています。
それでも休肝日に意味があるとされる理由
では無意味なのかというと、そうではありません。休肝日の価値は「総量が減ること」にあるというのが、複数の専門家に共通する見方です。
週に2日飲まない日があれば、それだけで週の総摂取量は減ります。大事なのは休肝日そのものではなく、1週間の総量をコントロールすること。 休肝日は、そのための現実的な手段という位置づけです。
もうひとつ、飲酒の習慣化を防ぐという意味もあります。毎日飲み続けると耐性ができて量が増えやすく、依存のリスクも高まります。飲まない日を挟むこと自体に、歯止めとしての役割があります。
設け方のコツ
アルコール健康医学協会は、「5日連続で飲んで2日休む」より「2〜3日飲んだら1日休む」ほうがよいとしています。
まとめて休むより、間隔を空けて挟むほうが、習慣として飲み続ける状態を避けやすいという考え方です。毎日飲んでいる方なら、まず週1日から始めて、段階的に増やすのが現実的だと思います。
避けたほうがよい飲み方
ガイドラインは、量とは別に飲み方についても注意を挙げています。
- 一時多量飲酒(1回に純アルコール60g以上):外傷の危険も高めるため避けるべきとされています
- 他人への飲酒の強要
- 不安や不眠を解消するための飲酒
- 病気療養中・投薬後の飲酒
- 飲酒中・飲酒後の運動や入浴
3つ目は見落とされがちです。眠れないからお酒を飲む、という習慣は依存につながりやすいとされています。寝つきはよくなっても睡眠の質は下がるので、結果的に眠りは浅くなります。
まず把握することから
ここまで数字を並べましたが、実際にやってみると、自分がどれくらい飲んでいるかは意外と分からないものです。
その日の杯数は覚えていても、度数まで含めて計算する人は多くありません。缶チューハイ1本とビール1本では純アルコール量が違う、と知っていても、毎回電卓を出すのは面倒です。
そこで、タップするだけで純アルコール量を記録できるアプリを作りました。「今夜のグラス」といいます。
ビールや日本酒などのプリセットを選べば自動で計算され、その日の合計と、20gに対してどのくらいかが表示されます。度数と量を直接入れることもできます。
休肝日を記録する機能もあります。飲まなかった日を残せるので、週にどのくらい休めているかが後から見えます。
ひとつ、設計で決めていることがあります。飲みすぎた日を責めるような表示はしません。 記録が続かなくなる一番の原因は、開くのが気まずくなることだと思っているからです。数字はそのまま出しますが、それ以上のことは言いません。
登録もインストールも不要です。
ほかにも日常のちょっとした場面で使えるアプリを公開しています。よかったらアプリ一覧もご覧ください。
本記事は厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月公表)およびe-ヘルスネット等の公開情報をもとにまとめたものです。飲酒による健康への影響には大きな個人差があり、ここで挙げた数値がすべての方に当てはまるわけではありません。医療上の助言ではありませんので、健康状態に不安がある場合や、飲酒量を自分でコントロールできないと感じる場合は、医師や専門の相談窓口にご相談ください。妊娠中・授乳中の方、20歳未満の方、病気療養中や服薬中の方の飲酒については、それぞれ別の注意が必要です。


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